店舗の移転・退去を行う際、オフィスやテナント物件との契約内容によっては、原状回復のためにスケルトン工事が必要となる場合があります。スケルトンとは、建物の柱や壁などの骨組みを指す建築用語です。
飲食店やアパレルなどの店舗経営者として、スケルトン工事の基礎的な知識は押さえておく必要があります。しかし、工事の費用相場や流れなどを把握できていない方もいるのではないでしょうか。
本記事では「スケルトン工事」について、内装工事との違いや費用相場、メリット・デメリットなどについてみていきます。
この記事でわかること
●スケルトン工事とは
・内装工事との違いは解体する範囲
・相場は35,000円前後
・原状回復のために行う
●スケルトン工事のメリット
・物件によってはコストを抑えられる
・好みの設備を揃えられる
・間取りの変更も可能
●スケルトン工事のデメリット
・内部の老朽化には別途修繕が必要
・骨組みが残るため大きな変化はない
●スケルトン工事の前にすべきこと
・近所の住民に挨拶しておく
・賃貸物件の場合は事前に確認する
スケルトン工事とは?|内装工事との違い
スケルトン工事は業者によって執り行われるものの、経営者としても内容や費用の把握は重要です。ここでは、スケルトン工事の概要をみていきます。
スケルトン工事と内装工事の違い
スケルトン工事と内装工事では、移転や退去の際に解体する範囲が異なります。スケルトン工事では原則建物の骨組みを除いた全てを解体する一方で、内装工事は壁や床などを元に戻す必要はありません。
内装工事はスケルトン工事とまったく異なるわけではなく、必要に応じてスケルトン工事の内容に内装工事を含むケースも存在します。
スケルトン工事の費用の相場
スケルトン工事の費用は、1坪あたり3万~5万円です。業界の費用相場は35,000円前後といわれています。撤去する設備の多い飲食店や美容院などの業種は、廃棄物の分別に時間を要するため高額になりやすい傾向にあります。
1坪2万円以下で工事を請けている業者も存在するものの、作業の質に関してあまり評判は良くないといわれるため注意が必要です。
スケルトン工事が行われる場合
スケルトン工事の必要性は、退去時に原状回復が必須となるか否かにかかっています。特にテナント物件の場合は原状回復を貸与条件としており、借りる前の状態がスケルトンであれば退去時も元に戻すためにスケルトン工事を行うのが一般的です。
スケルトン工事のメリットは?
スケルトン工事は条件によって義務付けられている場合があるものの、メリットも何点か存在します。ここでは、スケルトン工事のメリットを3つ解説します。
物件によってはコストを抑えられる
スケルトン工事では設備や内装を全て撤去するケースが多いため、基本的に内装工事よりも費用は高額です。しかし、設備・内装が既に揃っている「居抜き物件」であれば、退去時のコストを比較的抑えられます。
また、規模が小さい店舗や劣化の進んでいない店舗などの場合は、工事費用をさらに安く抑えることが可能です。
店舗の使い勝手が良くなる
何もない空間に一から設備を配置するため、店舗の使い勝手を改善できる点もスケルトン工事のメリットとして挙げられます。店舗を快適な状態にすれば、従業員の作業効率向上や増客にもつながります。
以前使用していた設備がある場合は、移転先の店舗への持ち込みも可能です。使い慣れた設備で、より快適な店舗づくりを目指すことができます。
間取りの変更など自由度が高い
スケルトン工事では、壁や床などについても自分で用意する必要があります。間取りの変更を始めとした店舗設計の自由度が高くなるため、内装のデザインに注力したい場合に推奨できる工事形態です。
ただし、内装が複雑になるほど退去時の工事費用も高額になります。あくまでも予算の範囲に限られる点は念頭に置いておきましょう。
スケルトン工事のデメリットは?
スケルトン工事を検討する際は、メリットだけでなくデメリットの把握も重要です。ここでは、スケルトン工事のデメリット2点をみていきます。
内部の老朽化を防ぐことができない
スケルトン工事では建物の骨組みを現状のまま再利用するため、内部の老朽化は防げません。構造部分の経年劣化を抑止するには、別途補修工事が必要です。
また、スケルトン工事を行う際に腐食や損傷などが見つかった場合、補修工事も並行しなければなりません。そのため、見積もりの時点ではほとんどの会社で補修工事が入るケースも考慮されます。
見た目の大きな変化はない
スケルトン工事において変更できる箇所は内観や内部設備のみとなっており、建物の見た目はさほど変化しません。外壁や屋根などの屋外設備は据え置きのため、店舗の外観までこだわりたい場合は別途工事が必要となります。
外観を変更したい場合は、スケルトン工事と併せて塗装工事などを依頼します。出費を抑えたいのであれば、店舗を置く建物選びも重要といえるでしょう。
スケルトン工事をする前に行った方がいいことは?
スケルトン工事の際、事前準備で行った方がよいこととして「近所の人へ挨拶する」「賃貸物件の場合は確認をとる」の2点があります。それぞれ詳しくみていきましょう。
近所の人への挨拶
スケルトン工事中は騒音や振動、ほこりなどが発生するため、近所の住民や店舗などへ挨拶しておく必要があります。工事の告知を出さずに開始・進行した場合、近隣から苦情が来るだけでなく、工事自体が中止となってしまう可能性もあります。
スケルトン工事のスムーズな進行のみならず、今後周囲と良好な関係を築いていくためにも、事前の挨拶や告知は重要です。
賃貸の場合確認をとる
退去時のスケルトン解体工事における原状回復の範囲は、建物の契約条件によって異なります。そのため、賃貸物件の場合は事前に貸主へ確認をとりましょう。
全撤去が必須の物件もあれば、壁やエアコンなどの設備は残してOKとしている物件も中には存在します。貸主の意向で「この設備は残してほしい」との要望が出るケースもあります。
認識の違いによるトラブルを避けるためにも、見積もりの際は借主・貸主・業者の3者を交えて検討することが大切です。
まとめ
ほとんどのテナント物件において、退去時のスケルトン工事は必須とされています。しかし契約条件によっては、全て撤去する必要はないとしている物件も存在するため、事前の確認が重要です。
スケルトン解体工事の費用は5万~10万円程度を考えておけば、さまざまなケースに対応しやすくなります。工事居抜き物件の場合はスケルトン工事の初期費用を抑えられるものの、骨組み等の補修工事が必要となってくる可能性が高いため注意しましょう。
スケルトン工事を依頼する業者を探す場合、不動産会社等の仲介業者に依頼すると仲介手数料がかかってしまいます。「自分だけで業者を探すのは難しい」と感じるのであれば、専門業者を直接紹介してくれるサービスを利用しましょう。
また、工事業者を選ぶ際に費用のみで比較するのは非推奨です。工事だけでなく、産業廃棄物処理まで丁寧に行ってくれる業者を選びましょう。業者のクオリティが高いかどうかは、見積もり時の対応や産廃処理における許可の有無などをみても推し量ることができます。